シムレクト小児用静注用10mgの用法・用量
通常、幼児・小児にはバシリキシマブ(遺伝子組換え)として20mgを総用量とし、10mgずつ2回に分けて、静脈内に注射する。初回投与は移植術前2時間以内に、2回目の投与は移植術4日後に行う。静脈内注射に際しては、本剤1バイアルを日局注射用水2.5mLで溶解し、全量を投与する。
【用法及び用量に関連する注意】
- 1.本剤は、移植術を受けることが確実であるときのみ投与を開始すること。
- 2.本剤は、腎移植において一般的に用いられる免疫抑制療法に加えて投与すること。
- 3.初回投与後に高度の過敏症反応や移植臓器廃絶が生じた場合は、2回目の投与を中止すること。
- 4.再移植等で、本剤投与歴又は他のマウス由来製剤投与歴のある患者に投与する場合は、過敏症反応の発現に十分注意すること。
- 5.体重35kg以上の患者に投与する場合は、期待される免疫抑制効果を得ることができない可能性があるため、40mgを総用量とし、20mgずつ2回に分けた投与を考慮すること。
シムレクト小児用静注用10mgの効能・効果
腎移植後の急性拒絶反応の抑制。
シムレクト小児用静注用10mgの副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 1.重大な副作用:
- 1)急性過敏症反応(頻度不明):次のようなアナフィラキシー症状を含む異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行い、また、その後の投与は行わないこと[1)皮膚症状:発疹、蕁麻疹、皮膚そう痒症、2)呼吸器:呼吸困難、呼吸不全、肺水腫、気管支痙攣、喘鳴、くしゃみ、3)循環器:低血圧、頻脈、心不全、毛細管漏出症候群、4)その他:サイトカイン遊離症候群]。
- 2)感染症(5%以上):細菌、真菌あるいはウイルスによる重篤な感染症(肺炎、敗血症、尿路感染症、単純疱疹等)があらわれることがある。また、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎やC型肝炎悪化があらわれることがある。
- 3)進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明):本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 4)BKウイルス腎症(頻度不明)。
- 2.その他の副作用:
- [1]精神神経系:(5%以上)頭痛、(5%未満)痙攣、第3脳神経麻痺。
- [2]眼:(5%未満)眼異常感、複視、眼痛、光視症。
- [3]呼吸器:(5%以上)口腔咽頭痛、咳嗽、鼻漏、湿性咳嗽、(5%未満)痰貯留、(頻度不明)鼻炎。
- [4]循環器:(5%以上)高血圧・血圧上昇。
- [5]血管:(5%未満)肺塞栓症、血管炎、静脈血栓症。
- [6]血液:(5%以上)リンパ球数減少、白血球数増加、血小板数増加、白血球数減少、(5%未満)単球数減少、好中球数減少、好中球数増加、(頻度不明)貧血。
- [7]消化器:(5%以上)下痢、(5%未満)悪心、(頻度不明)便秘。
- [8]肝臓:(5%以上)血中LDH増加、AST増加、ALT増加、血中ALP増加、血中ビリルビン増加、γ-GTP増加。
- [9]泌尿器:(5%以上)尿中蛋白陽性、(5%未満)血中クレアチニン増加、血中尿素増加。
- [10]皮膚:(5%以上)皮膚そう痒症、発疹、(頻度不明)術後創合併症、多毛症。
- [11]その他:(5%以上)発熱、C-反応性蛋白増加、悪寒、胸痛、血中トリグリセリド増加、(5%未満)けん怠感、下垂体良性腫瘍、関節痛、筋肉痛、血中リン減少、血中アルブミン減少、尿中ブドウ糖陽性、抗体検査陽性、末梢性浮腫、(頻度不明)疼痛、体重増加、高カリウム血症、高コレステロール血症。
シムレクト小児用静注用10mgの使用上の注意
【注意】
本剤は、製造工程の極めて初期の段階(セルバンク作製時)において、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びヒト免疫不全ウイルスに対する核酸増幅検査を実施していないヒト血液由来成分(ヒト血清アルブミン及びヒトトランスフェリン)を培地成分の一部として使用している。したがってウイルス感染症伝播のリスクを完全には否定し得ないことから、疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、本剤を投与する。
【警告】
- 1.本剤の投与は、免疫抑制療法及び臓器移植患者の管理に精通している医師のもとで使用すること。
【禁忌】
- 1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- 2.妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
- 3.生ワクチンを接種しないこと。
【重要な基本的注意】
- 1.免疫抑制療法は、二次的感染症に対し感受性を高める可能性がある。二次的感染が生じた場合には適切な治療を行うこと。
- 2.本剤は、製造工程の極めて初期の段階(マスターセルバンクの作製時)で、培地成分の一部としてヒト血液由来成分であるヒト血清アルブミン及びヒトトランスフェリンを使用しているが、最終製品の成分としては含まれていない。これらヒト血液由来成分に対して原血漿を対象とした核酸増幅検査は実施していないが、血清学的検査によりウイルスの抗原又はウイルスに対する抗体が陰性であることを確認している。更に、これらヒト血液由来成分及びバシリキシマブ(遺伝子組換え)の製造において、複数の工程によりウイルスの除去・不活化をしており、最終製品へのB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)混入の可能性は極めて低い。また、ヒトトランスフェリンの製造にフランスで採血したヒト血液を用いているが、本剤の投与により伝達性海綿状脳症(TSE)がヒトに伝播したとの報告はなく、TSEに関する理論的なリスク評価値は、一定の安全性を確保する目安に達しており、本剤によるTSE伝播のリスクは極めて低い。本剤の投与に際しては、その旨の患者又はその保護者への説明を考慮すること。
【合併症・既往歴等のある患者】
- 1.肝炎ウイルスキャリアの患者:肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス再活性化やC型肝炎悪化の徴候や症状の発現に注意すること。免疫抑制剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルス再活性化による肝炎があらわれることがある。また、HBs抗原陰性の患者において、免疫抑制剤の投与開始後にB型肝炎ウイルス再活性化による肝炎を発症した症例が報告されている。また、C型肝炎ウイルスキャリアの患者において、免疫抑制剤の投与開始後にC型肝炎悪化がみられることがある。
【腎機能障害患者】
本剤投与後に透析を行う場合は、ポリアクリロニトリル(PAN)膜及びポリエステルポリマーアロイ(PEPA)膜の使用を避けることが望ましい(in vitroでの透析膜への吸着試験において、PAN膜でバシリキシマブの濃度低下が認められ、PEPA膜で濃度低下の可能性が示唆された)。
【生殖能を有する者】
妊娠する可能性のある女性:妊娠する可能性のある女性では本剤最終投与後4ヵ月間は、避妊すること。
【妊婦】
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと(本剤はIgG抗体であることから胎盤を通過すると考えられ、また、妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)。
【授乳婦】
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
【小児等】
低出生体重児、新生児又は乳児を対象とした国内臨床試験は実施していない。また、体重9Kg未満の小児等は国内外臨床試験に含まれていない。なお、外国における使用経験については、16.1.2及び17.1.2を参照すること。
【高齢者】
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能(腎機能、肝機能、免疫機能等)が低下している)。
【相互作用】
- 1.併用禁忌:生ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン、経口生ポリオワクチン、乾燥BCG等)[免疫抑制下で生ワクチンを接種すると発症するおそれがあるので併用しないこと(免疫抑制下で生ワクチンを接種すると増殖し、病原性をあらわす可能性がある)]。
- 2.併用注意:不活化ワクチン(不活化インフルエンザワクチン等)[ワクチンの効果が得られないおそれがある(免疫抑制作用によって、ワクチンに対する免疫が得られないおそれがある)]。
【適用上の注意】
- 1.薬剤調製時の注意:
- 1)1バイアルあたり日局注射用水2.5mLをゆっくり加え、激しい振とうを避けて溶解すること。
- 2)点滴静注を行う場合は、生理食塩液又は5%ブドウ糖液で25mL以上に希釈し、20~30分で投与する(また、溶液を混和する際は点滴バッグを激しく振とうしないこと)。
- 3)本剤は蛋白製剤であるために、溶解後半透明の混濁がみられることがあるが、これにより本剤の薬効は影響を受けない。
- 4)外観に異常を認めた場合には使用しないこと。
- 5)他の製剤<日局注射用水・生理食塩液又は5%ブドウ糖液以外>との混注は行わないこと。
- 6)溶解後は、速やかに使用し、また、使用後の残液は微生物汚染のおそれがあるので再使用しないこと。
【その他の注意】
- 1.臨床使用に基づく情報:
- 1)シムレクト投与後、抗イデオタイプ抗体反応及びヒト抗マウス抗体反応が認められたとの報告がある。
- 2)免疫抑制剤による治療を受けた腎移植患者では、悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫、皮膚癌等)の発生率が高いとする報告がある。
【保険給付上の注意】
- 1.本製剤は、免疫抑制療法及び臓器移植患者の管理に精通している医師のもとで使用した場合に限り算定できるものであること。
- 2.本製剤は、初回投与は移植術前2時間以内に、2回目の投与は移植後4日後に行い、2回に限り算定できるものであること。(保医発第0912002号:2008年9月12日付)。
【保管上の注意】
2~8℃に保存。