パラアミノ馬尿酸ソーダ注射液10%*(AFP)の用法・用量
〈腎血漿流量測定(両腎)〉
・ 標準法(点滴静注法)
初回量として、パラアミノ馬尿酸ナトリウム注射液をとり、場合によっては必要量のマンニトール注射液又はチオ硫酸ナトリウム注射液を加え、パラアミノ馬尿酸ナトリウムの濃度が0.5~1.2%位になるように生理食塩液又は注射用水などで希釈して約50mLとし、1分間に約10mLの速度で5分間で静注する。次いで維持量として、パラアミノ馬尿酸ナトリウムの濃度が0.4~0.7%になるように、パラアミノ馬尿酸ナトリウム注射液を必要量のマンニトール注射液又はチオ硫酸ナトリウム注射液と混ぜ、生理食塩液又は注射用水などで希釈した混合液を、1分間に約3mLの速度で検査終了時まで持続点滴注入する。
・ 簡便法(1回注入法)
パラアミノ馬尿酸ナトリウム注射液(10%)10~20mLを、場合によっては、必要量のマンニトール注射液又はチオ硫酸ナトリウム注射液の混液として、約10分間かけて徐々に静注する。
〈腎血漿流量測定(分腎)〉
仰臥位にて太いテフロン針を留置し、ついでパラアミノ馬尿酸ナトリウムとして体重1kgあたり0.007gに相当する量を負荷する。引き続き、あらかじめ用意した灌流液*を1分間に約10mLの速度で点滴注入する。点滴開始後5~10分後にADHを負荷※し、さらに15分後座位をとらせる。
*)灌流液組成
マンニトール:80g(20%マンニトール400mL)。PAH:10%注射液の場合13mL。ADH:ADH負荷量×1.8(mL)。以上に生理食塩液を加えて総量を1000mLとする。
※)ADH負荷量
負荷すべき量(mL)=ADH溶液1mL×体重(kg)×1/2×1/100。ADH溶液:20U/mLのバソプレシン注射液1mLに生理食塩液19mLを加えて1U/mLに調整する。
パラアミノ馬尿酸ソーダ注射液10%*(AFP)の効能・効果
腎機能検査(両腎有効腎血流量測定・分腎有効腎血流量測定による)。
パラアミノ馬尿酸ソーダ注射液10%*(AFP)の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 2.その他の副作用:
- [1]消化器:(0.1~5%未満)悪心、嘔吐、下痢、口渇。
- [2]その他:(0.1~5%未満)頭痛、(0.1%未満)熱感(大量投与時に腰部熱感、心窩部熱感、会陰部熱感等)。
パラアミノ馬尿酸ソーダ注射液10%*(AFP)の使用上の注意
【妊婦】
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
【授乳婦】
診断上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
【高齢者】
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している)。
【相互作用】
- 2.併用注意:ペニシリン系抗生物質(アンピシリン)[ペニシリンの作用が増強するおそれがある(本剤がペニシリンの尿中排泄を阻害し、ペニシリンの血中濃度を上昇させると考えられている)]。
【適用上の注意】
- 1.薬剤投与時の注意:本剤の注入にあたっては、注入速度に留意すること。
- 2.測定時の注意:
- 1)〈腎血漿流量測定(両腎)〉前処理:
- (1)試験前日は、検査結果に影響を与えないため、サルファ剤、パラアミノサリチル酸カルシウム(PAS)、解熱薬、利尿薬等の服用は避ける。
- (2)必要に応じて患者の身長・体重を測定し、体表面積を求める。
- (3)試験開始約1時間前に水適量を飲ませる(簡便法の場合には試験開始約30分前に飲ませる)。
- (4)開始直前に採血、採尿し、ブランク・ヘマトクリット値測定用とする。
- 2)〈腎血漿流量測定(両腎)〉採血、採尿:測定時の血漿中濃度を約2mg/dL(1~5mg/dL)に保つように投与する。
- 標準法(点滴静注法):
- (1)点滴静注開始20分後に膀胱に挿入したカテーテルより排尿し約20mLの生理食塩液で2回膀胱を洗浄し、空気を送入吸引して膀胱を完全に空虚にし、この時刻を0分とする。
- (2)15~30分の間隔で2~3回採尿し、採尿時間とその尿量(膀胱洗浄液を含む)を正確に測定する。
- (3)各採尿と採尿の間に採血し、採血時間を記録する。
- 簡便法(1回注入法):
- (1)注射終了後25分で完全に排尿させ、排尿完了時刻を0分とする。
- (2)10分後及び20分後に注射の他側静脈より5mL採血し、時刻を正確に記録する。
- (3)30分後完全に排尿させ容量及び時刻を記録する。
- 3)〈腎血漿流量測定(両腎)〉定量:尿及び血漿中のパラアミノ馬尿酸の濃度を定量する。
- 4)〈腎血漿流量測定(分腎)〉前処理:14.2.1(1)-(3)のほか14.2.1(4)項の採血後に、クレアチニンも定量する。また、腎血漿流量測定(分腎)の場合、原則として検査前日に浣腸し、当日朝禁食とする。
- 5)〈腎血漿流量測定(分腎)〉採血、採尿:
- (1)局所麻酔薬でsaddle blockを行ってのち、砕石位にして、尿管カテーテル挿入を試みる。女性は両側に、男性は患側のみに7号ポリエチレンカテーテルをそれぞれ15~20cmの高さまで挿入する。男性の場合の健側尿は膀胱留置カテーテルよりの尿を代用する。
- (2)両健腎からの尿流が安定したところで分腎尿の採集を開始する。開始直前に10mLの静脈採血を行い、10分間尿、3回連続採集後さらに静脈採血を行う。安定した3回連続採尿ののち灌流液を5%糖液300mL/hrにかえてからフェノールスルホンフタレイン(PSP)1mLを管注し、さらに15分間の分腎尿を採集して検査を終わる。
- (3)検査終了後は尿管カテーテルを抜去し、膀胱にカテーテルを留置したまま帰室させ5%糖液の総量2000mLを6時間で点滴する。その間の点滴量に見合った尿量を確認したうえで留置カテーテルも抜去する。
- 6)〈腎血漿流量測定(分腎)〉定量:静脈採血:パラアミノ馬尿酸、クレアチニン定量。10分間分腎尿:尿量測定、Na、クレアチニン、パラアミノ馬尿酸定量。15分間分腎尿:尿量、PSP定量。
- 1)〈腎血漿流量測定(両腎)〉前処理:
- 3.計算:パラアミノ馬尿酸クリアランスによって得られる各数値の計算式は次の14.3.1-14.3.4のとおりである。14.3.1、14.3.2の項目については必要に応じて体表面積を求め、日本人の標準体表面積1.48㎡当りの値に補正する。クリアランス試験実施に際しての尿及び血漿中パラアミノ馬尿酸濃度の測定法、平均血漿中パラアミノ馬尿酸濃度の算出法その他の注意事項については省略し、計算式だけを列記した。実施の実際については文献を参照。
- 1)腎血漿流量Renal Plasma Flow、RPF(有効腎血漿流量Effective Renal Plasma Flow、ERPF):RPF=UPAHV÷PPAH。ただし、1<PPAH<5。
- 2)腎血流量Renal Blood Flow、RBF(有効腎血流量Effective Renal Blood Flow、ERBF):RBF=RPF×100÷(100-Ht)。
- 3)濾過率Filtration Fraction、FF:FF=GFR÷RPF。RPF:腎血漿流量(mL/min)。UPAH:尿中パラアミノ馬尿酸濃度(mg/dL)。PPAH:血漿中平均パラアミノ馬尿酸濃度(mg/dL)。V:1分間尿量(mL/min)。RBF:腎血流量(mL/min)。Ht:ヘマトクリット値(%)。FF:濾過率。GFR:糸球体濾過量(mL/min)。
- 4)除去率Renal Extraction Ratio、EPAH:EPAH=(PPAH-P´PAH)÷PPAH。EPAH:除去率。PPAH:動脈血中パラアミノ馬尿酸濃度。P´PAH:腎静脈血中パラアミノ馬尿酸濃度。除去率の測定は腎静脈カテーテル法を必要とするため一般的ではないが、除去率が得られれば全腎血漿流量、全腎血流量、真の糸球体濾過量などが計算できる。
[参考]
・ 基準値
わが国で発表されている健康成人の平均値の例は次のとおりである。(日本人の標準体表面積1.48㎡当りの値に補正)。
- [1]腎血漿流量(標準法)mL/min:♂607、♀522、♂562、♀527。
- [2]腎血漿流量(簡便法)mL/min:♂470、♀433、♂519、♀496、650。
- [3]除去率%:87.3、87.9。
- ・ 片側性腎主幹動脈狭窄判定基準
- Stamey:患側の尿量67%以上減少、PAH濃度100%以上上昇。Osius&Smith:患側のPSP濃度2倍以上。Howard:患側の尿量60%以上減少、Na濃度15%以上減少、クレアチニン濃度50%以上上昇。Rapoport:TRFR(tubular rejection fraction ratio)=(LNa×Rcr)÷(Lcr×RNa)。左腎動脈狭窄:0.62以下。右腎動脈狭窄:1.62以上。
- 4.診断上の注意:芳香族第一級アミノ基を有する薬剤(サルファ剤、パラアミノサリチル酸製剤等)、プロベネシド、解熱薬、利尿薬は、本剤の尿中排泄を阻害するため、併用により本検査の測定値に誤差を生じることがある。
【保管上の注意】
室温保存。
パラアミノ馬尿酸ソーダ注射液10%*(AFP)の成分一致薬品
成分一致薬品は見つかりませんでした。