トレプロスト吸入液1.74mgの用法・用量
〈肺動脈性肺高血圧症〉
通常、成人には、1日4回ネブライザを用いて吸入投与する。1回3吸入(トレプロスチニルとして18μg)から投与を開始し、忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で、1回3吸入ずつ、最大9吸入(トレプロスチニルとして54μg)まで漸増する。3吸入の増量に対して忍容性に懸念がある場合は、増量幅を1又は2吸入としてもよい。忍容性がない場合は減量し、1回最小量は1吸入とすること。
〈間質性肺疾患に伴う肺高血圧症〉
通常、成人には、1日4回ネブライザを用いて吸入投与する。1回3吸入(トレプロスチニルとして18μg)から投与を開始し、忍容性を確認しながら、3日以上の間隔で、1回1吸入ずつ、最大12吸入(トレプロスチニルとして72μg)まで漸増する。忍容性がない場合は減量し、1回最小量は1吸入とすること。
【用法及び用量に関連する注意】
- 1.吸入間隔は約4時間あけること。
- 2.本剤の吸入にはTD-300/Jネブライザを使用すること。
- 3.肝障害のある患者においては、重症度に応じて1回1又は2吸入から投与を開始し、慎重に増量すること。
トレプロスト吸入液1.74mgの効能・効果
- [1]肺動脈性肺高血圧症。
- [2]間質性肺疾患に伴う肺高血圧症。
【効能又は効果に関連する注意】
- 1.〈効能共通〉本剤の使用にあたっては、最新の治療ガイドラインを参考に投与の要否を検討すること。
- 2.〈肺動脈性肺高血圧症〉肺動脈性肺高血圧症のWHO機能分類クラス1における有効性及び安全性は確立していない。
- 3.〈肺動脈性肺高血圧症〉特発性PAH・遺伝性PAH及び結合組織病に伴うPAH以外のPAHにおける有効性及び安全性は確立していない(PAH:肺動脈性肺高血圧症)。
- 4.〈間質性肺疾患に伴う肺高血圧症〉「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(間質性肺疾患の臨床分類等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。
- 5.〈間質性肺疾患に伴う肺高血圧症〉間質性肺疾患に伴う肺高血圧症のWHO機能分類クラス4における有効性及び安全性は確立していない。
トレプロスト吸入液1.74mgの副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 1.重大な副作用:
- 1)血圧低下(1.6%)、失神(1.3%):過度の血圧低下、失神があらわれることがある。
- 2)出血(頻度不明):消化管出血又は鼻出血等があらわれることがある。
- 3)血小板減少(頻度不明)、好中球減少(頻度不明)。
- 4)甲状腺機能亢進症(頻度不明)。
- 2.その他の副作用:
- [1]出血傾向:(10%未満)喀血、肺出血、鼻出血、(頻度不明)不正子宮出血、結膜出血、紫斑。
- [2]循環器:(10%未満)潮紅、ほてり、動悸、低血圧。
- [3]消化器:(10%以上)悪心、(10%未満)下痢、軟便、嘔吐、腹痛、(頻度不明)上腹部痛。
- [4]筋骨格:(10%未満)顎痛、四肢痛、筋骨格痛、筋肉痛。
- [5]精神神経系:(10%以上)頭痛、浮動性めまい、(10%未満)頭部不快感、異常感、不眠症。
- [6]呼吸器:(10%以上)咳嗽(45.7%)、咽喉刺激感、呼吸困難、(10%未満)口腔咽頭痛、口腔咽頭不快感、口腔内不快感、鼻閉、喘鳴、(頻度不明)喀痰。
- [7]皮膚:(10%未満)発疹、皮膚そう痒症。
- [8]その他:(10%未満)発熱、倦怠感、浮腫。
トレプロスト吸入液1.74mgの使用上の注意
【禁忌】
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
【重要な基本的注意】
- 1.本剤の投与は、病状の変化への適切な対応が重要であるため、緊急時に十分な対応が可能な医療施設において肺高血圧症及び心不全の治療に十分な知識と経験をもつ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例にのみ行うこと。
- 2.本剤は血管拡張作用を有するため、本剤の投与に際しては、血管拡張作用により患者が有害な影響を受ける状態(降圧剤投与中、安静時低血圧、血液量減少、重度の左室流出路閉塞、自律神経機能障害等)にあるのかを十分検討すること。
- 3.血小板減少、好中球減少があらわれることがあるので、定期的に臨床検査を行うなど観察を十分に行うこと。
- 4.甲状腺機能亢進症があらわれることがあるので、必要に応じて甲状腺機能検査を実施するなど観察を十分に行うこと。
- 5.臨床試験において、めまい等が認められているので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
- 6.類薬では、吸入時に致死的気管支痙攣が報告されているので、気管支痙攣が認められた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
【合併症・既往歴等のある患者】
- 1.肺静脈閉塞性疾患を有する患者:投与しないことが望ましい(本剤の血管拡張作用により、心血管系の状態を著しく悪化させるおそれがある)。
- 2.高度に肺血管抵抗が上昇している患者:肺血管抵抗が高度に上昇した病態を示す肺高血圧症の末期と考えられる患者では、心機能も著しく低下している。
- 3.出血傾向のある患者:本剤の血小板凝集抑制作用により、出血を助長するおそれがある。
- 4.低血圧の患者:本剤の血管拡張作用により、血圧をさらに低下させるおそれがある。
【肝機能障害患者】
肝機能障害患者:本剤の血中濃度が上昇する。また、重度肝障害<Child-Pugh分類C>のある患者を対象として有効性及び安全性を評価した臨床試験は実施していない。
【妊婦】
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ウサギ)において骨格変異を有する胎仔(腰肋骨を有する胎仔)の発生率の増加が臨床曝露量(トレプロスチニルとして72μg吸入投与時)の3.1倍に相当する曝露量で認められている)。
【授乳婦】
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(類薬の動物試験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている)。
【小児等】
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
【高齢者】
一般に生理機能が低下していることが多い。
【相互作用】
本剤は主にCYP2C8により代謝される。
- 2.併用注意:
- [1]降圧作用を有する薬剤(カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、利尿剤、プロスタグランジンE1誘導体製剤、プロスタグランジンE2誘導体製剤、プロスタグランジンI2誘導体製剤等)[過度の血圧低下が起こることがあるので、併用薬もしくは本剤を増量する場合は血圧を十分観察すること(相互に降圧作用を増強することが考えられる)]。
- [2]抗凝固剤(ワルファリンカリウム等)、血栓溶解剤(ウロキナーゼ等)、血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン、チクロピジン塩酸塩、プロスタグランジンE1誘導体製剤、プロスタグランジンE2誘導体製剤、プロスタグランジンI2誘導体製剤等)[出血の危険性を増大させるおそれがあるので、定期的にプロトロンビン時間等の血液検査を行い、必要に応じてこれらの併用薬を減量又は投与を中止すること(相互に抗凝固作用を増強することが考えられる)]。
- [3]CYP2C8誘導剤(リファンピシン等)[本剤のAUC及びCmaxが低下し本剤の効果が減弱するおそれがあるので、肺高血圧症状の観察を十分に行うこと(本剤の代謝酵素であるCYP2C8を誘導することにより、本剤の代謝が促進されると考えられる)]。
- [4]CYP2C8阻害剤(デフェラシロクス)[本剤のAUC及びCmaxが上昇し本剤の副作用が発現するおそれがある(本剤の代謝酵素であるCYP2C8を阻害することにより、本剤の代謝が抑制されると考えられる)]。
【過量投与】
- 1.症状:本剤の過量投与後には過度の薬理学的作用により、潮紅、頭痛、低血圧、悪心、嘔吐、下痢等が発現する。
- 2.処置:過量投与時、トレプロスチニルは透析では除去されない。
【適用上の注意】
- 1.薬剤交付時の注意:医療従事者は、患者にTD-300/Jネブライザを渡す際に、正しい使用方法を十分に指導すること。また、次の点に注意するよう指導すること。・ 本剤の変色又はアンプル内に微粒子が認められるものは使用しないこと。・ 吸入にあたり1アンプル全量をネブライザに移し、1日の吸入が終了後ネブライザ内に残った液は捨てること。・ 本剤の希釈又は他剤との混合は避けること。・ 本剤が皮膚に付着したり、眼に入らないように気をつけること。また、本剤を吸入する際には、十分に換気すること。・ 本剤を飲み込まないこと。・ アルミ袋を開封後、2ヵ月以内に使用すること。また、未使用アンプルはアルミ袋に入れ、遮光保存すること。
【取扱い上の注意】
アルミ袋開封後は遮光して保存すること。
【保管上の注意】
室温保存。