ファイバ静注用1000の用法・用量
本品1瓶を添付の溶剤で溶解し、緩徐に静注又は点滴静注する(1分間に体重1kg当たり、2単位をこえる注射速度はさけること)。出血時に投与する場合、通常体重1kg当たり50~100単位を8~12時間間隔で投与する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減する。ただし、原則として1日最大投与量は体重1kg当たり200単位をこえないこととする。定期的に投与する場合、通常体重1kg当たり70~100単位を1日おきに投与する。
【用法及び用量に関連する注意】
本剤の使用にあたっては、患者の出血症状及び治療歴等を総合的に判断して使用すること。なお、本剤の出血時投与による効果が認められない場合は、他剤への切り替えを検討すること。本剤の出血時投与後、定期的な投与を開始する場合は、直近の投与から1日以上の間隔をおくことを目安とする。
ファイバ静注用1000の効能・効果
血液凝固第8因子インヒビター保有又は血液凝固第9因子インヒビター保有する患者に対し、血漿中の血液凝固活性を補いその出血傾向を抑制する。
ファイバ静注用1000の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 1.重大な副作用:
- 1)ショック・アナフィラキシー(いずれも頻度不明)。
- 2)DIC(頻度不明)。
- 3)血栓塞栓症(頻度不明):心筋梗塞、脳梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症等を起こすことがある。
- 2.その他の副作用:
- [1]過敏症:(1%未満)アレルギー反応、発熱、発疹、(頻度不明)顔面紅潮、じん麻疹、そう痒症。
- [2]精神神経系:(1%未満)浮動性めまい、頭痛。
- [3]消化器:(1%未満)下痢。
- [4]肝臓:(1~5%未満)AST上昇、ALT上昇、LDH上昇。
- [5]循環器:(1%未満)低血圧、(頻度不明)心筋梗塞。
- [6]投与部位:(頻度不明)血管痛。
- [7]その他:(頻度不明)悪寒、腰痛。
ファイバ静注用1000の使用上の注意
【注意】
本剤は、ヒト血漿を原料として製剤化したものである。原料となった血漿を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施するとともに、製造工程における一定の不活化・除去処理等を実施し、感染症に対する安全対策を講じているが、ヒト血漿を原料としていることによる感染症伝播のリスクを完全に排除することはできないため、疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、必要最小限の使用にとどめること。
【警告】
エミシズマブ<遺伝子組換え>の臨床試験で、本剤との併用において重篤な血栓塞栓症及び血栓性微小血管症の発現が複数例に認められているので、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中及び投与中止後6ヵ月間は、治療上やむを得ない場合を除き、本剤の投与を避けること(血栓塞栓症及び血栓性微小血管症のリスクを増大させる可能性がある)。
【禁忌】
- 1.血液凝固因子インヒビターを保有していない患者[凝固亢進のおそれがある]。
- 2.播種性血管内凝固症候群(DIC)を生じている患者[血栓形成を加速するおそれがある]。
【重要な基本的注意】
- 1.〈効能共通〉本剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、ヒト血漿を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを、患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。
- 2.〈効能共通〉本剤の原材料となる血漿については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体及び抗HIV-2抗体が陰性であることを確認している。さらに、プールした試験血漿については、HBV-DNA、HCV-RNA、HIV-1-RNA、HIV-2-RNA及びHAV-RNAについて核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。同様に、ヒトパルボウイルスB19-DNAについてはプールした試験血漿で核酸増幅検査(NAT)を実施し、10の5乗IU/mL以下であることを確認した健康人血漿を用いている。また、製造工程では、ウイルス不活化を目的とした2段階蒸気加熱処理(60℃、510~520分、19kPa加圧及び80℃、60~70分、37.5kPa加圧)及びウイルス除去膜によるろ過処理(ナノフィルトレーション)を施している。本剤は、前記のような安全対策を講じているが、投与に際しては、次の点に十分注意すること。
- 1)〈効能共通〉血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。
- 2)〈効能共通〉肝炎ウイルス感染等のウイルス感染のリスクについては完全に否定できないので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
- 3)〈効能共通〉現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
- 3.〈効能共通〉患者血漿中のインヒビター力価測定を行い、インヒビターの存在を確認したのち投与すること。
- 4.〈効能共通〉本剤の投与前及び投与後の血液凝固検査としてAPTT、PTT、TEG等いずれかの試験を行うこと。また、DICの徴候が見られることがあるので、血小板数異常、PT異常、フィブリノゲン異常、FDP異常等の検査で異常が認められた場合、投与を中止すること。
- 5.〈効能共通〉DIC及び心筋梗塞等を誘発することがあるので、1回に体重1kg当たり100単位をこえる投与や、1日に体重1kg当たり200単位をこえる場合には特に注意すること。
- 6.〈効能共通〉エミシズマブ(遺伝子組換え)の臨床試験において、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中の出血時に本剤を併用した症例において、血栓塞栓症及び血栓性微小血管症の発現が複数例に認められているため、次の事項に注意すること。
- 1)〈効能共通〉エミシズマブ(遺伝子組換え)投与開始前日までに、本剤の定期輸注は中止し、また、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中止後6ヵ月間は、本剤の定期輸注は行わないこと。
- 2)〈効能共通〉エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中は本剤の投与を避けること(やむを得ず本剤を投与する場合は、必ず血友病に対する十分な治療経験を有する医師のもと、必要な血液凝固系検査等が実施可能で血栓塞栓症及び血栓性微小血管症に対する適切な処置が可能な医療機関で投与し、また、投与後は血液凝固系検査等により患者の凝固系の状態を注意深く確認し、異常が認められた場合には本剤及びエミシズマブ(遺伝子組換え)の投与を中止し、適切な処置を行うこと)。
- 3)〈効能共通〉エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中止後6ヵ月間は、本剤の投与を避けること(やむを得ず本剤を投与する場合は、必ず血友病に対する十分な治療経験を有する医師のもと、必要な血液凝固系検査等が実施可能で血栓塞栓症及び血栓性微小血管症に対する適切な処置が可能な医療機関で投与し、また、投与後は血液凝固系検査等により患者の凝固系の状態を注意深く確認し、異常が認められた場合には本剤及びエミシズマブ(遺伝子組換え)の投与を中止し、適切な処置を行うこと)。
- 7.〈効能共通〉本剤と他の血液凝固因子製剤を併用する場合は、血栓形成等の相互作用が生じる可能性を否定できないため、治療上の有益性と危険性を十分に考慮すること。
- 8.〈効能共通〉間隔を置いての投与で、軽症短期間のアレルギー症状からショック・アナフィラキシーに至るまでのあらゆるアレルギー反応を起こすことがあるので、観察を十分に行うこと。
- 9.〈効能共通〉本剤の在宅自己注射は、医師がその妥当性を慎重に検討し、患者又はその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用すること。本剤を在宅自己注射で処方する際には、使用方法等の患者教育を十分に実施したのち、在宅にて適切な治療が行えることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。また、患者又はその家族に対し、本剤の注射により発現する可能性のある副作用等についても十分説明し、自己注射後何らかの異常が認められた場合や注射後の止血効果が不十分な場合には、速やかに医療機関へ連絡するよう指導すること。在宅自己注射適用後、自己注射の継続が困難な場合には、医師の管理下で慎重に観察するなど、適切な対応を行うこと。
- 10.〈血液凝固第9因子インヒビター保有する患者〉DIC、アレルギー及びショック・アナフィラキシーを誘発するおそれがあるとの報告があるので十分に注意すること。
【合併症・既往歴等のある患者】
- 1.心筋梗塞、急性血栓症・塞栓症の患者:冠動脈疾患、急性血栓症・急性塞栓症又はこれらの疑いのある患者では、頭蓋内出血等、生命に危険のおよぶ出血の場合を除き、投与しないこと(血栓形成を助長するおそれがある)。
- 2.血小板数が少ない患者:本剤の効力発現は正常な血小板数に依存することが知られており、十分な効果が得られないおそれがある。
- 3.大手術後、重症肝胆疾患、溶血性貧血等の患者:DICを起こすおそれがある。
- 4.IgA欠損症の患者:抗IgA抗体を保有する患者では過敏反応を起こすおそれがある。
- 5.溶血性貧血・失血性貧血の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある)。
- 6.免疫不全患者・免疫抑制状態の患者:ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない(感染した場合には、持続性貧血を起こすことがある)。
- 7.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
【妊婦】
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(生殖発生毒性試験は実施していない、また、本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない(感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある))。
【小児等】
低出生体重児、新生児を対象とした臨床試験は実施していない。
【高齢者】
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること(一般に生理機能が低下している)。
【相互作用】
- 2.併用注意:
- [1]抗線溶剤(トラネキサム酸等)[血栓形成傾向があらわれるおそれがある(本剤の凝固活性とこれらの薬剤の抗プラスミン作用が微小血栓の寿命を比較的長期化させるため)]。
- [2]濃縮血小板[血栓形成傾向があらわれるおそれがある(血小板凝集活性を亢進させるとの報告がある)]。
- [3]エミシズマブ<遺伝子組換え>[血栓塞栓症又は血栓性微小血管症があらわれるおそれがあるので、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中及び投与中止後6ヵ月間は、本剤の投与は避けるが、エミシズマブ(遺伝子組換え)投与中及び投与中止後6ヵ月間の出血に対してやむを得ず本剤を投与する場合は必ず血友病に対する十分な治療経験を有する医師のもと、必要な血液凝固系検査等が実施可能で血栓塞栓症及び血栓性微小血管症に対する適切な処置が可能な医療機関で投与すること(本剤由来の活性型血液凝固第9因子及び第10因子がエミシズマブ(遺伝子組換え)による凝固促進に影響を与える可能性が考えられ、凝固活性の増加につながるおそれがある)]。
【臨床検査結果に及ぼす影響】
- 1.本剤は第8あるいは第9因子インヒビター患者のPT、PTT、APTT、全血凝固時間(WBCT)、TEGのr値(k値)を短縮する。
- 2.血小板数、フィブリノゲン値の低下、FDPの上昇等DICの徴候がみられることがある。
- 3.本剤は第8あるいは第9因子インヒビター患者への投与後に既往性反応が起こることがある。
- 4.本剤の投与後に、受動伝達によると考えられる感染症抗体検査の陽転例が報告されているので、感染症の臨床診断は核酸増幅検査等を用いたウイルス感染症検査や臨床所見等に基づき総合的に行うこと。
【適用上の注意】
- 1.薬剤調製時の注意:
- 1)添付の溶剤以外は使用しないこと。
- 2)他の製剤と混合しないこと。
- 3)使用後の残液は細菌汚染のおそれがあるので使用しないこと。
- 4)本剤及び添付溶剤のバイアルキャップを外した後ゴム栓を消毒し、必ずゴム栓中央部分に添付の専用溶解器(薬液用両刃針)を刺し、溶解すること。
- 5)溶解した液を注射器に移す場合、添付の専用溶解器(薬液用両刃針)を用いること。
- 6)一度溶解したものは1時間以内に使用すること。
- 2.薬剤投与時の注意:
- 1)注入速度は1分間につき2単位/kgをこえないこと。
- 2)溶解時に沈殿の認められるものを使用しないこと。
- 3.薬剤交付時の注意:
- 1)子どもによる誤用等を避けるため、薬剤の保管に十分注意すること。
- 2)使用済の医療機器等の処理については、主治医の指示に従うこと。
【取扱い上の注意】
本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を投与又は処方した場合は、医薬品名(販売名)、製造番号、投与又は処方した日、投与又は処方を受けた患者の氏名、住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
【献血又は非献血の区別の考え方】
献血又は非献血の区別は製剤の安全性の優劣を示すものではない。この表示区別は、次記の手順に従って決められている。
- [1]採血国の政府が「自発的な無償供血」の定義を有している→その定義が1991年国際赤十字・赤新月社決議と同じ趣旨→当該国の「自発的な無償供血」の定義にそって採血されたことが確認できる:「献血」の表示。
- [2]採血国の政府が「自発的な無償供血」の定義を有していない:「非献血」の表示。
- [3]採血国の政府が「自発的な無償供血」の定義を有している→その定義が1991年国際赤十字・赤新月社決議と趣旨が異なる:「非献血」の表示。
- [4]採血国の政府が「自発的な無償供血」の定義を有している→その定義が1991年国際赤十字・赤新月社決議と同じ趣旨→当該国の「自発的な無償供血」の定義にそって採血されたことが確認できない:「非献血」の表示。
【ファイバ静注用の調製法及び専用溶解器(薬液用両刃針)の取り扱い方法】
- [1]冷所より薬剤バイアル及び溶剤バイアルを取り出し、室温にもどす。
- [2]両バイアルのプラスチックキャップをはずし、ゴム栓をアルコール綿等で消毒する。
- [3]専用溶解器(薬液用両刃針)のシールをはがし、ケースに入れたまま溶剤バイアルのゴム栓中央に垂直に刺す。
- ・ 必ず先に溶剤バイアルに刺す。・ 斜めに刺すとゴム栓の小片が溶剤中に落下することがあるので垂直に刺す。
- [4]専用溶解器(薬液用両刃針)のケースを取りはずす。
- [5]溶剤バイアルに専用溶解器(薬液用両刃針)を確実に固定した後、バイアルを逆さまにして、薬剤バイアルのゴム栓中央に垂直に刺す。
- 専用溶解器(薬液用両刃針)への接続:むらさき側に薬剤バイアルを接続し、透明側に溶剤バイアルを接続する。
- [6]バイアルを上下に連結したままの状態で泡をたてないようにゆるやかに揺り動かして溶解させる。
- [7]保護キャップをはずす。
- [8]注射筒を専用溶解器(薬液用両刃針)に接続する。
- ・ 接続時に注射筒をきつくねじこむと注射筒の先端が破損することがあるので注意する。・ 注射筒に空気を入れずに接続する。
- [9]バイアルを上下に反転させ、薬剤バイアルを上にした状態で注射筒を引き、薬液を注射筒に移行させる。
- [10]薬液がすべて注射筒に移行したら、注射筒を専用溶解器(薬液用両刃針)からはずす。
- [11]注射筒に翼付静注針を接続して、ゆっくりと静脈内に注射する。
- 点滴注入の場合:輸液セットを用いて投与する場合には、ゴム栓の破片などの不溶物を取り除くためフィルター(ろ過網)付き輸液セットを使用する。輸液セットの瓶針は溶解した薬剤バイアルに直接挿入すること。
【保管上の注意】
2~8℃。